
SCSは素晴らしい治療です。でも、リスクも知ってください。
こんにちは。世田谷人工関節・脊椎クリニックの脊椎脊髄外科専門医の大友 望です。
Q&Aシリーズ、第1回は「手術後の痛み(FBSS)」、第2回は「費用」についてお話ししました。 SCSのメリットや安心感をお伝えしてきましたが、今回はあえてネガティブな側面にスポットを当てます。
どんなに優れた医療にも、必ずリスクや合併症は存在します。 それを隠して「絶対に大丈夫です」と言うのは、医師として誠実ではないと私は思います。
患者さんが後で「こんなはずじゃなかった」と後悔しないよう、SCSのリスクや合併症のリスクについて、私が包み隠さずお答えします。
Q1. SCSの最大のリスクは何ですか?
A1. 最も注意すべきは「感染症」です。
SCSは、体内にリードや電池といった金属を入れる治療です。そのため、手術部位に細菌が入り込み、感染(化膿)を起こすリスクがゼロではありません。 万が一、創部感染がおきた場合は、傷口を洗浄して菌を洗い流したり、抗生剤で治療したりする必要があります。
【当院の対策】
私は脊椎外科医として、インプラント手術における感染対策を熟知しています。手術室の清潔管理、抗生剤の適切な投与など、徹底した周術期管理でリスクを最小限に抑えています。
Q2. 背中に入れた電極(リード)がズレることはありますか?
A2. 滅多にありませんが、稀にズレることがあり得ます。
リードは背骨の中の空間(硬膜外腔)に留置されています。リードにはアンカーというズレを予防できる固定具がついているのでまず問題ありませんが、激しい運動や強い衝撃などで、意図した場所からリードが動いてしまうことはあり得ます。もし、リードがズレると、ベストな場所に刺激が当たらなくなる可能性があります。
【当院の対策】
上記のようにリードが簡単に動かないよう、適切なアンカーを用いて慎重に固定します。また、ズレてしまった場合でも、外来で刺激設定を調整することで対応できる場合もあります。いまのところ再手術をした経験はありませんが、大幅なズレは再手術での修正が必要になります。
Q3. ずっと使っていると「効かなくなる」ことはありますか?
A3. 体が刺激に慣れてしまう「耐性(たいせい)」ができることがあります。
最初はすごく効いていたのに、数ヶ月~数年経つと、体がその電気刺激に慣れてしまい、効果が薄れて感じることがあります。
【当院の対策】
ご安心ください!最新のSCSデバイスは、刺激のパターン(波形、周波数など)を何通りにも変更できます。 「最近効きが悪いな」と感じたら、外来でプログラミングを調整し、体に新しい刺激として認識させることで、再び効果を取り戻すことが可能です。
まとめ:リスクは「管理可能」です
いかがでしたでしょうか。すみません、少し怖い思いをさせてしまったかもしれません。。。
しかし、これらのリスクは、適切な手技と管理によって「コントロール可能」なものです。
大切なのは、メリットとデメリットを天秤にかけたうえで、「やっぱり、この痛みをなんとかしたい」と思えるかどうかです。
SCSは、トライアル(お試し)で効果を確認し、もし合わなければ抜去できる、比較的「やり直しがきく」治療法でもあります。 リスクについても十分にご理解いただいた上で、一緒に最善の道を選んでいきましょう!
さて次回は、生活に直結する疑問。 「体に機械を入れてもMRIは撮れる?仕事や運転は?」という、SCS治療後の日常生活に関するQ&Aをお届けします。
参考文献
- Eldabe S, et al. Complications of Spinal Cord Stimulation and Peripheral Nerve Stimulation Techniques: A Review of the Literature. Pain Med. 2016;17(2):325-36. (※ SCSに関連する合併症(感染、リード移行など)の発生率や種類について網羅的にレビューした重要な論文です)
- Deer TR, et al. The Neuromodulation Appropriateness Consensus Committee on Best Practices for Spinal Cord Stimulation. Neuromodulation. 2014.
【執筆】大友望 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定 整形外科専門医
日本脊椎脊髄病学会認定 指導医
日本専門医機構 脊椎脊髄外科専門医