
「最近、お箸をよく落とすようになった」 「シャツのボタンが留めにくい」 「階段を降りるのが怖くて、手すりがないと不安だ」
もし、あなたやご家族にこのような症状があるなら、それは単なる「年のせい」や「五十肩」ではありません。
もしかすると、首の神経が押しつぶされる「頚椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)」、通称「頚髄症(けいずいしょう)」という病気が進行している危険なサインかもしれません。
こんにちは。世田谷人工関節・脊椎クリニックの脊椎脊髄外科医の大友 望です。
今日は、放置すると寝たきりになるリスクもある「頚髄症」について、セルフチェックの方法から、当院ならではの「身体に優しい手術」までを徹底解説します。
【結論】首の神経(脊髄)は、一度傷つくと戻りません。
腰の神経(馬尾神経)は比較的丈夫で回復力がありますが、首を通る「脊髄(せきずい)」は脳の一部のようなもので、非常にデリケートです。
一度強く圧迫されて神経細胞が死んでしまうと、手術をして圧迫を取っても、しびれや麻痺が元に戻らないことが多々あります。
つまり、腰部脊柱管狭窄症が「症状が強くなってから手術を考えてもなんとか間に合う病気」だとすれば、頚髄症は「症状が出始めたら、手遅れになる前に早めに手を打つべき病気」と言えます。
「まだ大丈夫」「待っていればきっとよくなる」という自己判断が、一番のリスクです。
頚髄症(けいずいしょう)とは?
首の骨(頚椎)の中で、加齢により骨が出っ張ったり、靭帯が分厚くなったりして、神経の束(脊髄)が締め付けられる病気です。
「神経根症」と「脊髄症」の違い
よくある「寝違え」や「首のヘルニア」で、片方の腕だけ痛い場合は「神経根症(しんけいこんしょう)」と呼ばれ、自然に治ることも多いです。 しかし、「脊髄症」は神経の本幹がやられている状態で、自然治癒は難しく、徐々に悪化していきます。
絶対に見逃してはいけない「3つの危険サイン」
- 巧緻運動障害(こうちうんどうしょうがい):
・お箸が使いづらい、字が下手になった、小銭がつまめない、ボタンが掛けられない。
・「手が不器用になった」と感じたら要注意です。 - 痙性歩行(けいせいほこう):
・足が突っ張って、ロボットのような歩き方になる。
・平らな道でつまずく。階段を降りるのが怖い。 - 両手足のしびれ:
・片手だけでなく、両手や足全体にしびれがある。
・頚椎由来のしびれは指だけではありませんよ!
【セルフチェック】10秒テスト(グーパーテスト)
ご自宅で簡単にできるチェック方法があります。
- 両手を前に出し、「パー」の状態にします。
- できるだけ速く、しっかりと握って「グー」、しっかりと指を伸ばして「パー」を繰り返します。
- 10秒間で何回できましたか?
【判定】
- 20回以上: 正常範囲です。
- 10回以下: 頚髄症の疑いが濃厚です。 すぐに専門医を受診してください。
- 指がバラバラに動いてしまう、小指が伸びない場合も要注意です。
治療法:いつ手術を決断すべきか
保存療法(様子を見る場合)
しびれが軽微で、手先の動きや歩行に支障がない場合は、薬物療法やカラー装着などで経過を見ます。しかし、マッサージや整体で首を強くひねることは厳禁です。悪化して麻痺が出ることがあります。
手術療法(根本治療)
以下の症状があれば、手術を検討します。
- お箸やボタンなどの細かい動作ができない
- 歩くのが不自由になってきた
- 排尿障害がある
手術の目的は、狭くなった脊柱管を広げて、脊髄への圧迫を取り除くことです。
「これ以上悪くならないようにする(進行予防)」という意味合いが強く、重症化する前に受けることが、術後の生活を守る鍵となります。
世田谷人工関節・脊椎クリニックの「強み」
腰だけじゃない。「全脊椎」を診られる専門医の安心感
多くのクリニックでは、「腰は診るけど、首の手術は難しいから大学病院へ」と紹介されるケースが少なくありません。首の手術は、それほど繊細で高い技術が求められるからです。
しかし、当院は違います。腰だけでなく、首(頚椎)から背中(胸椎)まで、背骨のすべての病気に対して専門的な手術を行っています。
- 顕微鏡を使った「精密な手術」
首の神経の周りには、脳へ行く大切な血管も通っています。 当院では、顕微鏡を使用し、神経や血管を細かく確認しながら安全に圧迫を取り除きます。 傷口を小さくし、筋肉のダメージを最小限に抑える「低侵襲手術」の考え方は、腰だけでなく首の手術でも貫かれています。 - 「首」と「腰」の合併例も見逃さない
実は、頚髄症の方の約20%〜30%は、腰部脊柱管狭窄症も合併していると言われています(Tandem Spinal Stenosis)。 「足がしびれるから腰だと思って治療していたら、実は原因は首だった」というケースも珍しくありません。
当院なら、必要時には首と腰の両方をMRIで評価して、「どちらが原因か」「どちらから先に治療すべきか」という総合的な戦略を立てることができます。これができるのは、全脊椎を扱える脊椎脊髄外科 専門医だけです。
まとめ:手のしびれは「脳」か「首」か。まずはMRIで確定診断を。
「手がしびれる」と脳神経外科を受診し、「脳には異常ありません」と言われて途方に暮れている患者様がたくさんいらっしゃいます。
でも、実はその正体は、首(頚髄症)かもしれません。
- 脳梗塞だと思って調べたら異常なしと言われた。
- 年のせいか、最近よく転ぶ。
- 手がしびれて家事がつらい。
そんな方は、ぜひ一度、当院のMRI検査を受けてください。
首の神経は「時間との勝負」です。 手遅れになって車椅子生活になる前に、原因を突き止め、適切な治療を行いましょう。
あなたの「動ける未来」を守りたいと思っています!
参考文献
- 日本整形外科学会,日本脊椎脊髄病学会(監):頚椎症性脊髄症診療ガイドライン 2020(改訂第3版),南江堂,2020.
- 日本脊髄外科学会:脊髄外科の基礎知識「頚椎症性脊髄症」
- Kanchiku T, et al. Prevalence of cervical spondylotic myelopathy in patients with lumbar spinal stenosis. Spine Surg Relat Res. 2022.
【執筆】大友望 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定 整形外科専門医
日本脊椎脊髄病学会認定 指導医
日本専門医機構 脊椎脊髄外科専門医