
「高そうだから…」とあきらめる前に。
こんにちは。世田谷人工関節・脊椎クリニックの脊椎脊髄外科専門医の大友 望です。
前回のQ&Aでは「手術後の痛み(FBSS)」についてお話ししました。 多くの方が「自分も治療対象かもしれない」と希望を持っていただけた一方で、次に必ず浮かぶ不安があります。
「でも、背中に機械を入れるなんて、数百万かかるんじゃないの?」
「保険は効くの? 自費診療なの?」
今回は、そんな切実なSCS(脊髄刺激療法)の「お金(費用)」の疑問に、ズバリお答えします。 結論から言うと、日本の医療制度をうまく使えば、費用負担は皆さんが想像しているよりもずっと低く抑えられます。
Q1. SCS(脊髄刺激療法)には健康保険が使えますか?
A1. はい、すべて健康保険(公的医療保険)が適用されます。
SCS(脊髄刺激療法)は、国に認められた標準的な医療行為です。美容整形のような「自費診療」ではありません。 診察、検査、手術、そして体に入れるデバイス(刺激装置)のすべてに保険が適用されます。
したがって、窓口での負担割合は、通常の病院受診と同じく「1割〜3割」となります。
Q2. それでも「3割」だと高額になりませんか?
A2. ここで「高額療養費制度」の出番です。自己負担には「上限」があります。
確かに、SCSのデバイス自体は非常に高価な精密機器ですので、単純に計算すると総医療費は高額になります。たとえ3割負担でも、数十万円〜になってしまう計算です。
しかし、日本には「高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)」という仕組みがあります。 ご存じの方もいらっしゃると思いますが、これは、手術などで医療費が高額になった場合所得に応じて決められた「自己負担限度額」を超えた分が払い戻される(また最初から支払いを限度額に抑える)制度です。
【費用の目安(70歳代・一般的な所得の方の場合)】
年収約370万〜770万円の方であれば、ひと月の医療費の上限は「約8万円〜10万円(+食事代など)」程度で済むケースがほとんどです。
つまり、何百万円という請求が来ることはありませんので、ご安心ください。
※具体的な金額は、年齢や所得によって異なります。詳しくは当院の事務スタッフが試算いたします。
Q3. 費用対効果(コストパフォーマンス)はどう考えればいいですか?
A3. 「痛みのない時間」と「将来の医療費削減」への投資です。
毎月何千円もの湿布や痛み止めを買い続け、整体やマッサージに通い、それでも痛くて仕事ができない…。 こうした「見えないコスト」や「失われる時間」を積み重ねていくことと、SCSという治療を受けて根本的な解決を目指すこと。
どちらが皆さんの人生にとってプラスになるでしょうか?
海外の研究では、SCSを受けた患者さんは、長期的に見ると医療費全体が削減され、仕事復帰による経済効果も高いことが示されています。
まとめ:お金の不安は、クリニックへ丸投げでOKです
「うーん、でも結局制度のことは難しくてよく分からないな…」
それでも大丈夫です。
SCSには保険がきいて、支払いを抑える制度もある。だからお金の不安で治療をあきらめる必要はない。
ということだけ、ご理解いただければ十分です! まずは一度、診察にお越しください。
さて次回は、お金と同じくらい、きっと皆さまが心配しているであろう「デメリット」について。
「SCSにリスクや副作用はあるの?失敗したらどうなる?」という鋭い質問に、私が正直にお答えしたいと思います。
参考文献
- Levy RM, et al. The cost effectiveness of spinal cord stimulation in the treatment of failed back surgery syndrome. Pain Med. 2008. (※ SCSは長期的な鎮痛薬や通院コストを減らし、費用対効果が高いことを示した論文です)
- 厚生労働省ホームページ「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
【執筆】大友望 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定 整形外科専門医
日本脊椎脊髄病学会認定 指導医
日本専門医機構 脊椎脊髄外科専門医