
「お尻から太ももの裏がビリビリ痛くて、座っていられない」 「ヘルニアと言われたけど、手術は不安だな…」
働き盛りの世代を突然襲う、腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア。 インターネットで検索すると、
「ヘルニアは自然に消えるから手術しなくていい」という情報もあれば、
「放置すると麻痺になる」という怖い情報もあり、
果たしてどちらを信じればいいのか分からなくなってしまいますよね。
こんにちは、世田谷人工関節・脊椎クリニック 脊椎脊髄外科専門医の大友 望です。
結論から申し上げます。 「ヘルニアは自然に治ることもありますが、『絶対に放置してはいけない危険なヘルニア』も存在します」
今日は、その見極めポイントと、治療法について分かりやすく解説します。
朗報:「ヘルニアは自然に消える」は本当です。
まず、安心してください。 実は、飛び出したヘルニアは、人間の体が本来持っている免疫の力(マクロファージという掃除屋さんみたいな細胞)によって、数ヶ月かけて自然に吸収され、縮小・消失することがあります(ここで注意!待てば必ず消失するわけではありません。数ヵ月待っても消えないこともよくあります)
データによって幅はありますが、おおよそ6割程度の方は、手術をせずに、飲み薬やブロック注射などの「保存療法」で痛みが治まっていきます。 ですので、ヘルニアと診断されたからといって、いきなり「明日手術です!」となることは基本的にはありません。
警告:手術を検討すべき「3つの危険サイン」
しかし、「自然治癒を待っていてはいけない(待っていたら手遅れになる)」ケースがあります。 以下の症状がある場合は、我慢せずに早急に脊椎専門医へ相談してください。
- 下肢に「麻痺(まひ)」が出ている
- スリッパが脱げやすい、つまずきやすくなった(足首の力が弱い)
- かかと立ち、つま先立ちができない
これらは、神経が深刻なダメージを受けている証拠です。 麻痺は、一度定着してしまうと、手術をしても完全には戻らないことがあります。「動かしにくい」と感じたら、即手術を検討すべきタイミングです。
- 排尿や排便がしづらい(膀胱直腸障害)
- 尿が出にくい、残尿感がある
- お漏らしをしてしまう(失禁)
- お尻の周りの感覚がなくなってきた
これは「馬尾(ばび)症候群」といって、脊髄神経の束が強く圧迫されている緊急事態です。 放置すると一生排泄障害が残る可能性があるため、緊急手術が必要になることもあります。
- 痛すぎて仕事や生活がままならない
麻痺がなくても、「痛すぎて眠れない」「トイレに行くのも這っていく」「仕事に行けず休職の危機にある」という場合。 自然治癒には数ヶ月かかりますが、その間ずっとこの激痛に耐えられますか?しかも待っていても必ず自然治癒するとは言えません。待てど暮らせど痛みがとれない場合もあります。 「社会復帰を急ぎたい」という社会的適応も、「ほとんど効かない薬を飲み続けるストレスから解放されたい」という気持ちも、立派な手術の理由になります。
忙しいあなたへ:内視鏡手術は「術後2日」で退院可能です
「手術が必要なのは分かったけど、何週間も会社を休めない…」 そう悩む現役世代の方も多いでしょう。
ご安心ください。現在のヘルニア手術は、昔のように背中を大きく切る必要はありません。 当院で行っている「内視鏡下椎間板摘出術(MED/MEL)」であれば、
- 傷口: わずか16〜18mm(指先サイズ)
- 筋肉へのダメージ: 最小限
- 入院期間: 最短で術後2日で退院、デスクワークなら数日後から復帰可能
このように、身体への負担を極限まで減らし、早期の社会復帰をサポートすることが可能です。
まとめ:自己判断は禁物。「MRI」で現状確認を。
「自分のヘルニアは、自然に治るタイプなのか? それとも手術が必要なタイプなのか?」 これは、レントゲンだけでは分かりません。ヘルニアや神経の状態を写し出す「MRI検査」が必須です。
「まだ大丈夫だろう」と我慢して、神経が死んでしまってからでは遅いのです。 まずは一度、当院でMRIを撮り、あなたのヘルニアの「正体」を確認しましょう。
治療方針を決めるのは、それからです。 痛みのない生活を取り戻し、バリバリ動けて働ける体に戻りましょう!
参考文献
- 日本整形外科学会,日本脊椎脊髄病学会(監):腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン 2021(改訂第3版),南江堂,2021.
- Benson RT, et al. Conservative versus surgical treatment of lumbar disc herniation. Cochrane Database Syst Rev. 2010.
【執筆】大友望 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定 整形外科専門医
日本脊椎脊髄病学会認定 指導医
日本専門医機構 脊椎脊髄外科専門医