
「毎週のように整骨院やマッサージに通っているのに、足のしびれが取れない」 「揉んでもらった直後は楽になるけれど、翌日にはまた痛くなる…」
そんな経験はありませんか? マッサージは気持ちが良いものですし、固まった筋肉をほぐすことは悪いことではありません。
しかし、もしあなたが「歩くと足がしびれる(間欠性跛行)」という症状でお悩みなら、そのマッサージは「一時しのぎ」に過ぎないかもしれません。
こんにちは。世田谷人工関節・脊椎クリニック 脊椎脊髄外科専門医の大友望です。
今回は、脊椎外科医の視点から、「マッサージで良くなる腰痛」と「病院で治療すべき危険なサイン」の違いについてお話しします。
結論:マッサージでは「神経の圧迫」は取れません
先に結論から言ってしまうと、残念ながら、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)そのものを、マッサージや整体で「完治」させることはできません。
理由はシンプルです。 脊柱管狭窄症は、背骨の中にある「骨」や「靭帯」が変形し、神経を物理的に押しつぶしている病気だからです。
いくら体の表面から筋肉を揉みほぐしても、体の奥深くにある「骨の変形」や「神経の圧迫」を取り除くことはできないのです。これは、虫歯を外側から撫でても治らないのと同じです。
なぜ、揉んでもらうと「楽」になるのか?
「でも、マッサージに行くと少し歩けるようになるよ?」と感じる方もいるでしょう。 これには医学的な理由があります。
- 血流の改善: 狭窄症になると、神経の血流が悪くなります。マッサージで周囲の筋肉がほぐれると、一時的に血流が良くなり、しびれが麻痺したように感じることがあります。
- 筋肉痛の緩和: 腰をかばって歩くことで生じた「二次的な筋肉の張り」が取れるため、体が軽く感じます。
つまり、マッサージは「根本治療」ではなく、「症状の一時的な緩和(対症療法)」として有効なのです。
注意! マッサージに頼りすぎてはいけない「3つの危険サイン」
マッサージで様子を見ても良い段階と、「今すぐ専門医に見せないと手遅れになる」段階があります。 以下の症状がある場合は、マッサージを中止し、すぐに当院などの脊椎専門クリニックを受診してください。
1. お尻周りの感覚がおかしい(排尿・排便障害)
おしっこが出にくい、残尿感がある、肛門周りがしびれる。これは神経が重度に圧迫されているサイン(馬尾症状)であり、緊急性が高い状態です。
2. 足に力が入らない(脱力感)
スリッパが勝手に脱げる、何もないところでつまずく。これは神経に相当なダメージがあり駄目になりかけている(麻痺している)可能性がある証拠です。放置すると、手術をしても戻らなくなる危険性があります。
3. マッサージの後に痛みが悪化する
脊柱管狭窄症の中には、背骨がグラグラする「すべり症」を合併しているケースがあります。強い力で押したりひねったりすることで、不安定な背骨がさらにズレてしまい、症状が悪化することがあります。実際に私はマッサージ後に症状が悪化した患者さんを何人もみたことがあります。
医師からのアドバイス「敵を知ってから、ケアをする」
私は、マッサージや整体を否定しているわけではありません!
手術をするほどではない軽度の方や、手術後のメンテナンスとして、筋肉を柔らかく保つことは非常に大切だからです。
しかし、「自分の背骨の中で何が起きているか(敵の正体)」を知らずに、漫然とマッサージに通い続けるのは時間と費用の浪費になりかねません。
まずは「MRI」で写真を撮りましょう
レントゲンでは分からない神経の状態も、MRI検査なら一目瞭然です。
- 「少し狭いだけだから、マッサージと薬で様子を見よう」
- 「これはかなり潰れているから、これ以上放置すると危険だ」
この判断ができるのは、医師だけです。
当院では、通常の制対手術だけでなく、低侵襲な内視鏡手術(MEL)や先進的な脊髄刺激療法(SCS)など、重症度に応じた様々な治療法を用意しています。「手術が必要」と言われるのが怖くて病院を避けている方も、まずは「現状確認」のためだけにでもいいので、いらしてください。
「大丈夫、まだマッサージでいけますよ」というお墨付きをもらうために病院に来る。 そんな使い方も、賢い選択だと私は思います。
まとめ
- マッサージは「症状の緩和」にはなるが、「神経の圧迫」は治せない。
- しびれ、脱力、排尿障害がある場合は、マッサージを中止して病院へ。
- まずはMRI検査で「敵の正体」を知り、それから自分に合ったケアを選びましょう。
当院は、患者様の「治りたい」という気持ちを全力でサポートします。 足のしびれが気になりだしたら、世田谷人工関節・脊椎クリニックへご相談ください。
参考文献
- 日本整形外科学会,日本脊椎脊髄病学会(監):腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン 2021(改訂第2版),南江堂,2021.
- 日本脊髄外科学会:「脊髄外科の基礎知識」腰部脊柱管狭窄症
- Baba H, et al. Clinical features and surgical results of lumbar spinal canal stenosis. Spinal Cord. 1996;34(5):269-276.
【執筆】大友望 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定 整形外科専門医
日本脊椎脊髄病学会認定 指導医
日本専門医機構 脊椎脊髄外科専門医