
「この激痛を分かってくれる医師がいない」と絶望していませんか?
こんにちは。世田谷人工関節・脊椎クリニックの脊椎脊髄外科専門医の大友 望です。
全10回にわたってお届けしてきた「SCS(脊髄刺激療法)Q&Aシリーズ」も、今回が最終回となります。 最後にお話しするのは、整形外科やペインクリニックの領域でも非常に治療が難しく、患者さんが深い孤独の中で苦しんでいる疾患、「CRPS(複合性局所疼痛症候群)」についてです。
骨折や捻挫などのケガはすでに治っているはずなのに、あるいは原因が全く分からないのに、少し触れただけで飛び上がるほど痛い、風が当たるだけでも激痛が走る……。 このような極めて強い痛みに対し、SCSがなぜ「希望の光」となり得るのか、そしてなぜ「早期の決断」が必要なのかを解説します。
Q1. そもそもCRPS(複合性局所疼痛症候群)とはどんな病気ですか?
A1. 神経のシステムがエラーを起こし、異常な激痛を引き起こす病気です。
通常、ケガをすれば痛みを感じ、傷が治れば痛みも消えます。しかしCRPSの場合、ケガや手術をきっかけに神経の伝達システムが暴走してしまい、傷が治った後も脳に「激しい痛み」の信号を送り続けてしまいます。 単なる痛みだけでなく、異常に汗をかく、腫れるといった、自律神経の異常を伴うのこともCRPS特徴です。
「気のせい」「精神的なもの」と誤解されやすく、ドクターショッピング(病院を転々とする)を繰り返してしまう患者さんが非常に多い疾患です。
Q2. 飲み薬やブロック注射でCRPSは治らないのでしょうか?
A2. 初期であれば効果がありますが、重症化すると従来の治療では太刀打ちできなくなります。
CRPSの初期段階であれば、神経の炎症を抑える薬やブロック注射、そして痛みをこらえながらのリハビリで改善することもあります。 しかし、これらを数ヶ月続けても激痛が治まらない場合、「これ以上同じ治療を続けても劇的な改善は見込めない」という壁にぶつかります。この段階で、SCS(脊髄刺激療法)という強力な選択肢カードを切れるかどうかが、その後の人生を大きく左右します。
Q3. CRPSに対して、なぜ「早期のSCS導入」が重要なのですか?
A3. 痛みが「脳に完全に記憶される前」にバリアを張る必要があるからです。
激痛の信号が何ヶ月、何年も脳に送られ続けると、脳自体が「痛みの回路」を強固に作り上げてしまい、後から神経にアプローチしても痛みが取れにくくなってしまいます。 そのため、「色々な治療を何年も試して、ダメだったから最後にSCS」ではなく、「保存治療で数ヶ月効果が出なければ、手遅れになる前に速やかにSCSを行う」ことが、効果的であると報告されています。
Q4. どこに行っても治らず絶望しています。相談しても良いのでしょうか?
A4. もちろんです。一人で痛みに耐え続ける必要はありません。
CRPSの激痛は、本人にしか分からない想像を絶するものです。当院では、脊椎外科専門医として神経の構造を熟知した立場から、SCSを用いた痛みのコントロールに積極的に取り組んでいます。
まずは数日間のSCSトライアルを行い、あなたのその耐え難い痛みがどれくらい和らぐのか、一緒に確認してみましょう。
SCS Q&Aシリーズ 完結にあたって
全10回にわたり、SCSという「切らない、痛みの治療法」について解説してきました。
「もう治らない」と言われた腰痛や足のしびれ、術後もおさまらない腰痛や足の痛み、そしてCRPSの激痛に対しても、医学は確実に進歩し、新しい選択肢を生み出しています。
どうか諦める前に、一度当院の扉を叩いてみてください。
さて、次回からの新シリーズでは、当院が誇る「最新の脊椎手術(根本治療)」についてお話ししていきます。 SCSが適応とならないような「背骨のズレ」や「強い麻痺」がある方に対し、オーダーメイドの患者適合型ガイドを用いた極めて安全で正確な固定術など、高度な技術について分かりやすく解説する予定です。こちらもお楽しみに!
参考文献
- Kemler RN, et al. Spinal cord stimulation in patients with chronic reflex sympathetic dystrophy. N Engl J Med. 2000.
- Taylor RS. Spinal cord stimulation in complex regional pain syndrome and refractory neuropathic back and leg pain/failed back surgery syndrome: results of a systematic review and meta-analysis. J Pain Symptom Manage. 2006.
【執筆】大友望 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定 整形外科専門医
日本脊椎脊髄病学会認定 指導医
日本専門医機構 脊椎脊髄外科専門医