
治療の流れを知れば、不安は希望に変わります!
こんにちは。世田谷人工関節・脊椎クリニックの脊椎脊髄外科専門医の大友 望です。
前回の4回までの連載で、SCS(脊髄刺激療法)の仕組み、安全性、そして私がこの治療を選ぶ理由をお伝えしてきました。
今回は連載の締めくくりとして、「実際に治療を受ける場合の具体的な流れ」について復習も兼ねて解説します。
手術というと、「入院期間はどれくらい?」「仕事は休まないといけないの?」など、生活への影響が気になりますよね。
SCSは、皆さんが想像しているよりもずっとコンパクトで、日常生活への復帰が早いのが特徴です。
STEP 1:外来での適応判断(初診〜検査)
まずは一度、外来を受診してください。 MRIなどの画像検査を行い、脊椎の状態を確認します。ここで大切なのは、「本当にSCSが適しているか」を見極めることです。
もし、痛みの原因が「大きなヘルニアによる神経圧迫」であれば、SCSではなく内視鏡手術を提案することもありますし、「高度な腰部脊柱管狭窄」があれば、腰椎除圧固定術を提案させていただくかもしれません。
「従来の脊椎手術がよいか(切るか)、SCSの方がよいか(切らないか)」。脊椎外科専門医として、最適な治療方針を提示します。
STEP 2:トライアル手術(お試し)
SCSの適応があると判断した場合、いよいよトライアルです。
- 入院期間: 3日程度です。
- 手術時間:麻酔下で約20分。体に大きな負担はありません。
- 確認事項: リード(電極)を入れた状態で数日間過ごし、「痛みが半分以下になるか」「よく眠れるか」を確認します。
もし効果がなければ、この時点でリードを抜去し、退院となります。体には何も残りません。元通りになります。
STEP 3:本植込み手術
トライアルで確実な効果を実感できた場合のみ、本植込みを行います。 (※トライアルとのあと、一度退院して別の日に行います)
- 手術時間:40-60分程度。
- 内容: 電池(刺激装置)をお尻や腰部などの目立たない場所に埋め込みます。
STEP 4:メンテナンス(退院後)
退院後は、定期的な通院で刺激の調整(プログラミング)を行います。 リモコンを使ってご自身で刺激を調整できるため、痛みの波に合わせてコントロールが可能です。
疼痛が比較的落ち着いていれば、頻回の外来通院は不要です。ご安心ください。
まとめ:新しい生活への第一歩
SCS(脊髄刺激療法)は、「痛みをゼロにする」魔法ではありません。 しかし、「痛みをコントロールできる」状態にすることで、旅行に行ったり、孫と遊んだり、仕事を再開したりと、「当たり前の日常」を取り戻すための強力なツールです。
この連載を通じて、SCS(脊髄刺激療法)について理解を深めていただき、またほんの少しでも「私の痛みも、まだ諦めなくていいのかもしれない…」と思っていただけたら、脊椎外科医師としてこれほど嬉しいことはありません。
【次回予告】SCS治療の「疑問」にすべて答えます!
さて、今回の連載を通じて治療の流れはイメージできたけれど、まだまだ気になることはありませんか?
「費用はどれくらいかかるの?」 「MRI検査は受けられなくなる?」 「体に機械が入って、違和感はないの?」
こうした患者さんのリアルな疑問にお答えするため、次回からは新シリーズ【SCS・Q&A解説】をスタートしたいと思います。 患者様側からは少し聞きにくい内容や、デメリットについても、あえて包み隠さず解説しますので、ぜひご覧ください!
参考文献
- Deer TR, et al. The Neuromodulation Appropriateness Consensus Committee on Best Practices for Spinal Cord Stimulation. Neuromodulation. 2014;17(5):431-64.
- Levy RM, et al. The cost effectiveness of spinal cord stimulation in the treatment of failed back surgery syndrome. Pain Med. 2008.
【執筆】大友望 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定 整形外科専門医
日本脊椎脊髄病学会認定 指導医
日本専門医機構 脊椎脊髄外科専門医