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すべり症

すべり症

すべり症の症状や治療について、専門医が分かりやすく解説

本来、積み木のように積み重なっている腰椎が文字通り、前方や後方へすべってしまった状態を「すべり症」といいます。特に、高齢の女性に多く発症する病気ですが、一体、どのような症状が見られるのでしょうか。また、どのように治療するのでしょうか。専門医がわかりやすく解説します。

目次

すべり症とはどんな病気ですか?

「すべり症」とは一般的に腰に起こる病気のことで、「腰椎すべり症」とも呼ばれます。
腰椎は、ちょうど積み木のように5つの骨が積み重なっているのですが、骨が前方や後方へすべり出してしまうことがあります。
これを「腰椎すべり症」といい、これによって、さまざまな症状が引き起こされます。

すべり症がよく起きるのは、上から4番目にある「第4腰椎」です。

脊椎すべり症の説明図

すべり症の典型的な症状は?

すべり症になって腰椎がずれると、ずれた部分を中心に腰椎の形が崩れてしまい、腰椎の後方を走っている神経が圧迫され、そのため、さまざまな症状が引き起こされます。

一般的な症状としてよく現れるのは、腰痛や下肢の痛みなどです。また、一定の距離を歩くとふくらはぎなどに痛みやしびれ、疲労感などが現れ、しばらく休息すると再び歩くことができることがあります。これを「間欠性跛行」といいます。

さらにすべりがひどくなると、安静にしても腰や足が痛くなったり、時には排尿や排便が困難になったりすることもあります。 一度ずれてしまった腰椎は、自然に元に戻ることはありません。そのため、治療によって症状を改善することが必要になります。

すべり症になる原因は?

すべり症の原因として最も多いのは加齢です。年齢が上がるにつれて、椎間板や靭帯、関節などの組織が変性を起こし、それに伴って腰椎の安定性が損なわれます。そのため、腰椎が前後方へすべり出してしまうのです。
特に、腰に負担のかかる作業を日常的に行っている人(たとえば介護職や工場勤務者など)はすべり症になりやすく、また、男女比を見ると男性に比べて女性の方が多く発症しています。

すべり症には、背骨や椎間板などの変性が原因となって起きる「変性すべり症」のほか、腰椎が2つに分離する「腰椎分離症」を原因として起きる「分離すべり症」があり、「変性すべり症」は加齢とともに誰でも起こりうるのに比べ、「分離すべり症」は幼い頃や若い頃、スポーツをしていた人に発症するケースが目立ちます。

運動をする子供たち




骨が未発達な成長期に、野球、サッカー、バレーボール、バスケットボールなど、身体の前後屈や腰のひねり、ジャンプからの着地といった動作を繰り返すスポーツを過度に練習すると、すべり症になりやすいとされています

すべり症はどんな検査を行いますか?

すべり症は、まずX線(レントゲン)検査でずれやすべりの状態を診断します。腰椎を前後に曲げた状態で撮影することで、すべりの程度を判断することが可能です。
ただし、X線ですべりの状態を把握することはできても、神経が圧迫を受けているかどうかはわかりません。そのため、神経の圧迫を調べることを目的にMRI検査を行うこともあります。また患部の状態をさらに詳しく調べたり、分離すべり症の場合、分離部の亀裂の状態を細かく調べたりするために、CT検査を行うこともあります。
当院で導入している画像診断機器はこちらです。

CT、MRI

すべり症はどんな治療を行いますか?

すべり症の治療には、「保存療法」と「手術療法」があり、患者さんの症状に応じて治療法が選択されます。

「保存療法」には薬物療法、ブロック療法、装具療法、理学療法などがあります。痛みを抑えるために消炎鎮痛剤や神経障害性疼痛治療薬などが処方されます。痛みが強い場合は神経根や硬膜外などにブロック注射を行います。
また、コルセットを使用して腰の負担を軽減することもあります。
そのほか、ストレッチや筋力トレーニングなどを行って、腰椎の安定性を高めることも大切です。

こうした保存療法を行うことで、症状が軽減する人も少なくありません。しかし、保存療法は根本的な治療ではないため、完全に痛みや症状を取り除くことはできません。また、保存療法を行っても症状がおさまらず、痛みがどんどんひどくなったり、筋力の低下が進行したり、排便や排尿が困難になったり、日常生活に支障をきたす場合には「手術療法」を選択することもあります。

すべり症の女性

すべり症の手術はどのような方法がありますか?

すべり症の手術は、大きく分けて2種類あります。ひとつは、神経の圧迫を取ることを目的に行うもの、もうひとつは、不安定になっている背骨を安定させることを目的に行うものです。

神経の圧迫を取ることを目的に行う手術は、一般的に椎弓切除術と呼ばれ、神経の圧迫を取り除くために骨の一部や靭帯、関節突起の一部などを切り取り、神経の通り道を広げます。一方、事前の画像検査で背骨がぐらぐらしている(不安定性がある場合)には、背骨を安定させることを目的に固定術を行います。骨を削るなどして神経の通り道を広げてから、すべりを起こしている背骨部分を、自分の骨やネジなどを用いて固定します。

除圧固定術

すべり症手術のリスクはありますか?

かつて、すべり症の手術は切開する範囲も広く、患者さんの負担も大きかったのですが、近年では術式が進化し、手術時間も1〜2時間と短縮されました。手術に伴う入院期間も大体1週間前後で済み、現在では多くの患者さんが根治をめざし、手術を選択しています。
手術を行うことによって、基本的に症状は軽減しますが、手術による合併症などのリスクはゼロではありません。合併症のリスクはすべり症に限らず、腰の手術全般にいえることですが、なかには術後も下肢のしびれが残るケースがあります。
また、固定術の場合はネジを入れる際に筋肉の一部を切除する必要があり、それに伴う痛みが術後に生じることもあります。
そのほか、感染症が発症したり、ネジの挿入に伴う神経や血管の損傷が起こったりすることもあります。

すべり症の手術を受けた後の治療はどうなりますか?

固定術のあとは、骨がくっついて安定するまでの約半年間はコルセットを装着する必要があります。はじめの3か月は硬いコルセットをつけ、後半の3か月は柔らかいコルセットを着用します。また、コルセットを着用している間も、定期的にCT検査を受け、骨がしっかりくっついているか評価する必要があります。

一方、椎弓切除術あるいは腰椎除圧術の場合は、術後1か月間を目安にコルセットを着用します。

術後は歩行練習や体幹トレーニングなどを行って日常生活に早く戻れるようにリハビリテーションを行います。退院後は腰に負担がかかる姿勢や運動を控えるように気を付ける必要があります。また、加齢に伴う骨粗鬆症により、一度骨がくっついても接合部がもろくなったり、骨折してネジがはずれてしまったりすることもあります。そのため、定期的に医師の診断を受けることが必要です。

医師と患者

すべり症を放置しているとどうなりますか?

すべり症が軽度のうちは、安静時には痛みを感じないことがほとんどですが、そのまま放置していると何もしていなくても痛みやしびれが生じたり、立てなくなったり、歩行が困難になったりすることもあります。

一度ずれてしまった腰椎は自然に元に戻ることはないため、できるだけ早期のうちに医師の診察を受け、適切に対処することが必要です。
また、「X線検査を受けたところ、医師に『特に治療の必要はない』と言われた」というケースもあります。X線検査だけでは腰椎がすべっていることはわかっても、どれくらい神経を圧迫しているのか、MRIなどで確認しなければ、正確にすべり症を評価することはできません。そのため、できれば背骨に詳しい整形外科医の診察を受け、正しく評価してもらうことが大切です。

すべり症セルフチェックリスト

以下の項目にあてはまる場合はすべり症の疑いがあります。一度、受診することをおすすめします。

・腰痛がある
・下肢の痛みやしびれがある
・長時間、歩くとお尻やふともも、ふくらはぎなどに痛みやしびれが出る
・休みながらでないと歩けない
・前かがみになると症状が楽になる
・脚に力が入らないことがある

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