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成人脊柱変形症

成人脊柱変形症

成人脊柱変形症

成人脊柱変形症とは何ですか?症状や治療について、専門医が分かりやすく解説

「成人脊柱変形症」。病名自体、初めて聞く方が多いかもしれません。あまり一般的には知られていない病気であり、まだ正式な病名にもなっておりません。分かりやすく言うと、背骨が曲がってしまう病気です。成人脊柱変形症になったらどうなるの?治療はあるの?など、みなさまの疑問を専門医が分かりやすく解説いたします。

脊椎の写真

目次

成人脊柱変形症はどんな病気ですか?

背骨が前や左右に曲がったり、ねじれてしまったりする病気です。 子供でも同じく、背骨が曲がってしまうことがあり、「側弯症」と呼ばれております。子供の場合は前後の変形は乏しく、左右の変形や背骨のねじれがあることが多いです。

成人脊柱変形症のイメージ画像

成人脊柱変形症はどんな症状ですか?

背骨が曲がってしまい、腰痛などを生じます。歩行困難になったり、前を見ることが困難になったりします。腰が曲がってしまうと、机など何かに常に肘をついてないと立っていられない状態になります。肘が何度も刺激されることで、変色したり、黒ずんだりしてしまうことがあります。そのような肘の状態をキッチンエルボーと呼んでいます。キッチンエルボーがある場合、症状としてはかなり重症であるサインとなります。
また、腰が曲がっていることで胃が圧迫されるため、胃もたれや逆流性食道炎などの胃腸障害を生じます。内科を受診してもなかなか良くならない胃腸障害が実は成人脊柱変形症が原因のことがあります。

成人脊柱変形症になる原因は?

一番多いのは加齢や圧迫骨折に伴う骨の変形です。圧迫骨折をし、その時に骨が過度に潰れてしまうと、骨は治ったとしても、背中は曲がったままの状態になり、負担がかかるので、成人脊柱変形症になってしまうことがあります。

その他、小児側弯であったにも関わらず、気づかないまま成長し、加齢と共に重力などの影響で変形が進行してしまう場合があります。昔は学校検診で側弯症を検査することがなかったので、小児側弯と認識されないまま大人になってしまうことがありました。

現在は学校検診で側弯症を診断しますので、側弯症のほとんどは早期に発見することができます。

圧迫骨折のイメージ画像
小児側弯のイメージ画像

どんな検査を行いますか?

当院ではレントゲンとCT検査とMRI検査をします。当院の画像検査機器はこちらです。

まずはレントゲンで首から股関節までを一度に撮影して全体のバランスを見ます。全体を見ることで曲がり具合などが評価できます。
CT検査で骨がどのような形をしているか、どの程度ねじれているかなどの評価をいたします。手術する場合は背骨の中にネジを入れるので、入れるネジの太さや長さを調べます。

MR検査では神経の評価をいたします。ヘルニアや脊柱管狭窄など、他の病気がないかを調べます。

脊椎のレントゲン写真

どんな治療を行いますか?

脊柱の変形や症状が軽い場合には、リハビリテーションで筋力をつけ、少しでも痛みを和らげるようにトレーニングをします。同時に薬物療法やブロック注射などを行います。

脊柱の変形が強い方や胃腸症状が出ている方、痛みで休みながらでないと歩けない状態の方など日常生活に支障をきたす場合には手術を検討します。

成人脊柱変形の手術はどのような方法がありますか?

症例にもよりますが、変形が強い場合、一度に行うと長時間を要するため、体への負担が大きくなります。当院では体の負担を考え、数回に分けて手術を行っております。

① 後方固定術
1回目は腰骨の下の方から骨盤までを固定します。曲がっている背骨を真っ直ぐにするためには骨盤から支える必要があります。1回目が終わりましたら、一度退院して1ヶ月ほど時間をおいて体力の回復を図ります。

② 前方固定
 椎間板の歪みの矯正及び骨同士をくっつけるために椎間板を人工物に置き換えます。

③ 後方矯正固定
  背骨にそって医療用ネジを入れて固定し、背骨をできるだけまっすぐにして固定します。

脊椎手術の写真

この手術は、身体の状態が良くないと行えません。心電図、肺機能検査、血液検査などを行って、全身麻酔や長時間の手術に耐えられる体かどうかをしっかり検査してから行います。

高齢になればなるほどリスクは高くなりますので、全身状態、既往症の有無などを考慮して慎重に検討いたします。

手術リスクはありますか?

長い手術なので、感染や貧血などの合併症を引き起こす可能性があります。
広範囲の固定になりますので、手術後にネジが緩んでしまったり、骨が折れてしまったりすることがあります。そうならないように、手術後はしっかりコルセットをつけてリハビリテーションを行うことが大切です。

当院では術後再発防止のため、医師や理学療法士がしっかりとアドバイスいたします。

手術後、完治するまでにどのくらいかかりますか?

手術後、骨が安定するまでは6ヶ月程度かかります。初めの3ヶ月は硬いコルセットを着用し、次の3ヶ月は柔らかいコルセットを着用いたします。骨のつき具合が悪い場合は、装着期間が伸びる可能性もあります。
同時に体幹の筋肉をつけるリハビリテーションを行い、歩く練習や腰に負担をかけない日常生活の過ごし方の指導をいたします。
広範囲の固定であるため、骨が安定した後も定期的に診察を受ける必要があります。

成人脊柱変形症を放置するとどうなりますか?

背骨の変形がひどくなることで、腰や背中の痛みが強くなったり、胃腸障害、歩行障害が進行してしまったりする可能性があります。
最悪の場合は寝たきりになってしまうかもしれません。軽症の場合は、進行せずにそのままの状態が続くこともありますが、悪くなる可能性もありますので、自覚症状がある方は、早めに病院を受診することをおすすめします。

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まずはご自身の脊椎の状態を知って原因の早期発見・治療をオススメします。
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