
「もう歳だから…」と、痛みのない生活を諦めていませんか?
こんにちは。世田谷人工関節・脊椎クリニックの脊椎脊髄外科専門医の大友 望です。
前回のQ&Aでは、脊柱管狭窄症で「骨を削りたくない・固定術を避けたい方」へのアプローチについてお話ししました。
今回は、当院でもご本人やご家族から非常に多くご相談を受ける「年齢と手術」についてです。
「90歳近いから、もう大きな手術は体力的に無理だと言われた」
「痛みが辛いけど、他の病院では歳だから我慢するしかないと言われた」
年齢を重ねるごとに増える腰や足の痛み。
しかし、「高齢だから」という理由だけで治療を諦める必要はありません!
体への負担が極めて少ないSCS(脊髄刺激療法)なら、ご高齢の方でも安全に痛みを和らげ、再び歩く喜びを取り戻せる可能性があります。
Q1. 高齢者にとって、腰の手術はやはりリスクが高いのでしょうか?
A1. はい。できないわけではありませんが、一般的な「骨を削る・ボルトで固定する手術」は、高齢になるほどリスクが上がります。
高齢者における腰の手術のリスクとして最も懸念されるのは、長時間の手術による心臓や肺への負担、そして術後の体力低下です。また、骨粗鬆症が進んでいると、せっかく入れた金属のボルトが緩んでしまうリスクもあります。
そのため、病院によっては「年齢」を理由に積極的な外科手術を見送り、痛み止めや湿布といった保存療法に留めてしまうところもあります。
Q2. では、なぜSCSなら80代や90代でも手術が可能なのでしょうか?
A2.手術時間が短く、体へのダメージがごくわずかだからです。
SCSの最大のメリットは、その「圧倒的な低侵襲(体への負担の少なさ)」にあります。 背骨を削ったり、金属で固定したりするような大掛かりな操作がないため、出血も少なく、トライアルなら20-30分、本植込みでも1時間弱という短時間で終わります。
手術時間が短いだけでなく、傷も小さく浅いため、80代、90代の方でも安全に受けていただける治療なのです。
Q3. 「80代の腰部脊柱管狭窄症」で、少しでも歩けるようになりたいです。
A3. SCSの「お試し(トライアル)」が、その願いを叶える第一歩になります。
80代の腰部脊柱管狭窄症の患者さんの多くは、「若い頃のように走りたい」わけではなく、「自分の足でトイレに行きたい」「近所のスーパーまで杖をついてでも歩きたい」という、ささやかで切実な願いを持っています。
SCSは、まさにその「生活の質(QOL)」を向上させるための治療です。痛みの信号を電気でブロックすることで、連続して歩ける距離が延び、笑顔で過ごせる時間が増えます。まずは数日間の「トライアル」で、どれくらい歩きやすくなるかを体験していただくのがおすすめです。
Q4. 機械の操作は難しくありませんか?高齢の患者さんでも扱えますか?
A4. テレビのリモコンのようにシンプルです。放置しておいても大丈夫です。
SCSの強さの調整は、専用の小さなリモコンで行います。ボタンは少なく、操作は直感的で非常にシンプルです。
テレビのリモコンのように単純な操作なので、今まで私のところでSCSを受けられたご高齢の方でも、すぐに使い方に慣れていらっしゃいます。もちろん入院中や外来に操作方法は何度も説明いたしますので、ご安心ください。
それに、もしご自身での操作が不安な場合は、調整せず放置しておいても全く問題ありません。
まとめ:残りの人生を、痛みのない笑顔の時間へ
「もう歳だから、痛いのは仕方ない」 もしご自身がそう言い聞かせていたり、ご家族がそう言って痛みを我慢していたりするなら、ぜひ一度ご相談にいらしてください。
SCSという「体への負担が少ない選択肢」が、諦めかけていた穏やかな日常を取り戻すきっかけになるかもしれません。
次回は、いよいよSCS Q&Aシリーズの最終回!
「原因不明の激痛『CRPS(複合性局所疼痛症候群)』と診断された方へ。早期のSCS導入がカギとなる理由」について解説します。
参考文献
- Sivanesan E, et al. Spinal Cord Stimulation in the Elderly: A Review. Pain Med. 2019.
- Deer TR, et al. The Neuromodulation Appropriateness Consensus Committee on Best Practices for Spinal Cord Stimulation. Neuromodulation. 2014.
【執筆】大友望 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定 整形外科専門医
日本脊椎脊髄病学会認定 指導医
日本専門医機構 脊椎脊髄外科専門医