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「痛み」よりも厄介な「しびれ」に悩んでいませんか?
こんにちは。世田谷人工関節・脊椎クリニックの脊椎脊髄外科専門医の大友 望 です。
前回のQ&Aでは、SCS最大のメリットである「お試し(トライアル)」について解説しました。 今回は、痛みと同じくらい、あるいはそれ以上に患者さんを精神的に追い詰める「しびれ」についてお話しします。
「腰の手術をして、激しい痛みは軽くなったけど、足のしびれだけが残ってしまった」 「薬を飲んでもしびれが全く取れなくて、気持ちが悪くて眠れない」
こうした「しびれ」に対し、SCS(脊髄刺激療法)がどのようにアプローチできるのか 、詳しく解説していきます。
Q1. 手術後、「痛みは取れたのにしびれだけ残る」のはなぜですか?
A1. 長期間圧迫されていた神経が、深いダメージを受けてしまっているためです。
脊柱管狭窄症やヘルニアの手術によって神経の圧迫を取り除けば、通常、痛みは比較的はやい段階で徐々に引いていくことが多いです。 しかし「しびれ」は別です。 長期間にわたってギュッと潰されていた神経は、いわば「古くなって傷んだ電線」 のように傷ができて、ダメージをうけており、圧迫が取れてもすぐに回復しません。 そのまま神経が過敏な状態になり、脳に間違った信号=しびれを送り続けてしまうと言われています。
Q2. 病院で「しびれの薬」をもらっていますが、あまり効きません。
A2. 飲み薬だけで、傷ついた神経のしびれを完全に取るのは非常に困難です。
いままで受診された医療機関で何種類かの「神経の痛みを和らげる薬」を処方されている方は多いと思います。これらは非常に良いお薬で、たしかに私も外来で処方することはありますが、しびれをゼロにしようと薬の量を増やすと、強い眠気やふらつき、めまいといった副作用 が出てしまい、日常生活に支障をきたすことがあります。 「しびれが取れないから、薬の種類や量を増やしたいけど、副作用がつよくて無理…」という八方塞がりの状態に陥る患者さんは少なくありません。
内服薬は、あくまでも「神経の痛みやしびれを和らげる」ものではありますが、それすらも十分に継続することができない場合も珍しくはないのです。
Q3. SCS(脊髄刺激療法)は、痛みだけでなく「しびれ」にも効くのですか?
A3. はい、有効です。SCSは不快なしびれにも効果がある といわれています。
SCSから送られる微弱な電気刺激は、脊髄を通る痛みの信号をブロックするだけでなく、患者さんが感じている「ビリビリ」「ジンジン」といった不快なしびれにも効果がある と言われています。
電気刺激を感じさせずに、しびれや痛みの信号だけをスーッと消し去るような刺激プログラム もあり、患者さんの好みによって使い分けることができます。
まとめ:しびれは「一生の我慢」ではありません
「しびれはもう治らないから、一生付き合っていくしかないよ」 もし、前の病院でそう言われて諦めかけているなら、一度当院へご相談ください。 SCS という治療法が、その「一生の我慢」とも思われていたしびれを終わらせるための強力な選択肢になるかも しれません! まずは数日間の「トライアル(お試し)」で、あなたのしびれがどう変化するか、ご自身の体で確かめてみませんか?
次回は、ペインクリニックなどに通っている方必見。 「ブロック注射も効かない坐骨神経痛。次の一手は大きな手術か、それともSCSか?」について解説します。
参考文献
Kemler RN, et al. Spinal cord stimulation in patients with chronic reflex sympathetic dystrophy. N Engl J Med. 2000.
Cruccu G, et al. EFNS guidelines on neurostimulation therapy for neuropathic pain. Eur J Neurol. 2007.
【執筆】大友望 医師 世田谷人工関節・脊椎クリニック 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 日本脊椎脊髄病学会認定 指導医 日本専門医機構 脊椎脊髄外科専門医
SCS は素晴らしい治療です。でも、リスクも知ってください。
こんにちは。世田谷人工関節・脊椎クリニックの脊椎脊髄外科専門医の大友 望 です。
Q&Aシリーズ、第1回は「手術後の痛み(FBSS)」、第2回は「費用」についてお話ししました。 SCSのメリットや安心感をお伝えしてきましたが、今回はあえてネガティブな側面にスポットを当てます。
どんなに優れた医療にも、必ずリスクやデメリットは存在します。 それを隠して「絶対に大丈夫です」と言うのは、医師として誠実ではないと私は思います。
患者さんが後で「こんなはずじゃなかった」と後悔しないよう、SCSのリスクや合併症 について、私が包み隠さずお答えします。
Q1. SCSの最大のリスクは何ですか?
A1. 最も注意すべきは「感染症」 です。
SCS は、体内に異物(リードや電池)を入れる治療です。そのため、手術部位に細菌が入り込み、感染(化膿)を起こすリスクがゼロではありません。 万が一、創部感染がおきた場合は、傷口を洗浄して菌を洗い流したり、抗生剤で治療したりする必要があります。
【当院の対策】 私は脊椎外科医として、インプラント手術における感染対策を熟知しています。手術室の清潔管理、抗生剤の適切な投与など、徹底した周術期管理でリスクを最小限に抑えています。
Q2. 背中に入れた電極(リード)がズレることはありますか?
A2. 滅多にありませんが、稀にズレることがあり得ます。
リードは背骨の中の空間(硬膜外腔)に留置されています。リードにはアンカーというズレを予防できる固定具がついているのでまず問題ありませんが、激しい運動や強い衝撃などで、意図した場所からリードが動いてしまうことはあり得ます。 もし、リードがズレると、ベストな場所に刺激が当たらなくなる可能性があります。
【当院の対策】 上記のようにリードが簡単に動かないよう、適切なアンカー を用いて慎重に固定 します。また、ズレてしまった場合でも、外来で刺激設定を調整することで対応できる 場合もあります。いまのところ再手術をした経験はありませんが、大幅なズレは再手術での修正が必要になります。
Q3. ずっと使っていると「効かなくなる」ことはありますか?
A3. 体が刺激に慣れてしまう「耐性(たいせい)」 ができ て、効きづらくなることがあります。
最初はすごく効いていたのに、数ヶ月~数年経つと、体がその電気刺激に慣れてしまい、効果が薄れて感じることがあります。
【当院の対策】 ご安心ください!最新のSCSデバイスは、刺激のパターン(波形、周波数など)を何通りにも変更 できます。 「最近効きが悪いな」と感じたら、外来でプログラミングを調整し、体に「新しい刺激」として認識させることで、再び効果を取り戻す ことが可能です。
まとめ:リスクは「管理可能」です
いかがでしたでしょうか。すみません、少し怖い思いをさせてしまったかもしれません。。。 しかし、これらのリスクは、適切な手技と管理によって「コントロール可能」 なもの です。
大切なのは、患者さまご自身でメリットとデメリットを天秤にかけたうえで、「やっぱり、この痛みをなんとかしたい」 と思えるかどうかです。
SCS は、トライアル(お試し) で効果を確認し、もし合わなければ抜去できる 、比較的「やり直しがきく」治療法 でもあります。 リスクについても十分にご理解いただいた上で、一緒に最善の道を選んでいきましょう!
さて次回は、生活に直結する疑問。 「体に機械を入れてもMRIは撮れる?仕事や運転は?」という、SCS治療後の日常生活に関するQ&Aをお届けします。
参考文献
Eldabe S, et al. Complications of Spinal Cord Stimulation and Peripheral Nerve Stimulation Techniques: A Review of the Literature. Pain Med. 2016;17(2):325-36. (※SCSに関連する感染、リードのズレといった合併症の発生率や種類について網羅的にレビューした重要な論文です)
Deer TR, et al. The Neuromodulation Appropriateness Consensus Committee on Best Practices for Spinal Cord Stimulation. Neuromodulation. 2014.
【執筆】大友望 医師 世田谷人工関節・脊椎クリニック 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 日本脊椎脊髄病学会認定 指導医 日本専門医機構 脊椎脊髄外科専門医
「心肺機能は元気なのに、足だけが動かない」
こんにちは、世田谷人工関節・脊椎クリニック 脊椎脊髄外科の大友 望 です。 マラソンやジョギングを愛好されている患者様から、診察室で最もよく聞く悩みのひとつに「息は全然上がっていないのに、ふくらはぎがパンパンに張って、前に進めなくなる」という訴えがあります。
「走り始めて数100メートルで、足がしびれて止まってしまう」
「しゃがみ込んで少し休むと治るけれど、走り出すとまたすぐ痛くなる」
「タイムを狙うどころか、ふつうに走ることすらできなくなってしまった」
もし、あなたがこのような症状に悩まされているなら、それは単なる筋肉疲労や練習不足ではありません。「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」 である可能性があります。
なぜ、ランナーは「狭窄症」に苦しむのか?
脊柱管狭窄症の最大の特徴は、「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」 という症状です。 これは、背骨の中の神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、立ったり歩いたりすることで神経が圧迫され、足への血流や指令が途絶えてしまう現象です。
ランナーの方にとって、これほど残酷なことはありません。 日々のトレーニングで鍛えた心臓(エンジン)は最高なのに、足を動かすための神経(電気配線)が腰でおかしくなっている状態 だからです。
「もう歳だから、ランニングは引退かな…」 そう諦めてしまう前に、知っていただきたいことがあります。
「手術=ランニング引退」ではありません
多くのランナーの方が、手術に対してこのような誤解を持っています。 「背骨の手術をしたら、強度が落ちて二度と走れなくなるんじゃないか?」
一昔前の、背中を大きく切ってボルトで固定する手術であれば、確かにパフォーマンスへの影響は大きかったかもしれません。 しかし、医療技術は進化しています(もちろんボルトで固定する手術であっても、スポーツ復帰は可能です!)
当院で行っている「内視鏡下椎弓形成術(MEL)」 は、ランナーなどスポーツを愛する患者様と非常に相性の良い手術です。
1. 筋肉を傷つけない
傷口はわずか16mm程度。背骨を支える大切な背筋を温存したまま、神経を圧迫している靭帯や余分な骨だけをピンポイントで削り取ります。
2. 背骨の動きを温存できる
ボルトで固定しないため、背骨本来の「しなり」や可動域が保たれます。これはランニングのフォームを維持する上で非常に重要です。
復帰までの目安(ロードマップ)
個人差はありますが、内視鏡手術を受けた場合、おおよそ以下のようなスケジュールでランニングへの復帰を目指します。
術後翌日 〜: 歩行開始
術後1 ヶ月〜: 軽い筋トレ再開
術後2 ヶ月~: 土や芝生の上での軽いジョギング開始
術後3 ヶ月~: 本格的なランニング再開!
「詰まり」さえ取ってしまえば、足への血流が再開し、本来のパフォーマンスを取り戻すことができます。
最後に:ゴールのテープをもう一度切るために
「痛みを我慢しながら、だましだまし走る」 それも一つの選択ですが、神経へのダメージが蓄積し、ランニングどころか日常生活での歩行さえ困難になってしまうリスクがあります。
私たちは、ただ痛みをとるというだけでなく、その先にある「また楽しく走れるようになること」をゴールに設定して治療を行います。 趣味をまた楽しみたい、というのも手術を受ける立派な理由になると思っています。
「来年のマラソン大会にエントリーしたい」 そんな目標を、ぜひご相談ください。 あなたのランナー人生の第2章を、脊椎外科医として全力でサポートします。
【執筆】大友望 医師 世田谷人工関節・脊椎クリニック 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 日本脊椎脊髄病学会認定 指導医 日本専門医機構 脊椎脊髄外科専門医